世界的メーカー豊田自動織機グループのITを担う豊田自動織機ITソリューションズ(以下、TIIS)。同社は、社内課題の解決とともに、そこで得た知見をグループに活かすべく「ゼロトラスト型クラウドネイティブ環境」構築に着手しました。ポイントは、Netskopeの「SSE(Security Service Edge) + SD-WAN」を導入し、シングルベンダーで完全なSASE(Secure Access Service Edge)を実現したことです。セキュリティとネットワークを統合し、情報漏えい対策の強化、運用効率化、通信費の最適化が図れました。今後AIの可視化・制御に取り組んでいきます。
1991年、豊田自動織機の情報システム部門から分離・独立し誕生したTIIS。自動車、産業車両、繊維機械など、世界で事業を展開する豊田自動織機グループの根幹をITで支えています。現場に深く入り込み、生産現場のIoT化、AI活用、サイバーセキュリティ強化といった幅広い領域に応え、IT戦略の立案から企画・開発、運用まで一貫して支援するのが同社の強みです。また、トヨタ生産方式(TPS)の哲学とIT技術を融合させ、グループ外のお客様にも最適なソリューションを提供しています。
同グループのITプロフェッショナル集団として、TIISは先進的な取り組みにいち早く挑戦し、そこで得た知見やノウハウをグループにフィードバックする役割も担っています。資産を所有せず、新しい技術への挑戦と柔軟性向上を目的に、TIISではほぼすべてのシステムがクラウド上で動いています。クラウドネイティブ環境のもとで、セキュリティに関してビジネス面と働き方の面の2つの観点から課題を抱えていたと、同社 ITプラットフォームユニット ITインフラ部 部長 野萱直之氏は振り返ります。
「1つ目のビジネス面では、クラウドサービスの利用拡大に応えるセキュリティ基盤となっていませんでした。また、情報漏えい対策と利便性のトレードオフがDX(デジタルトランスフォーメーション)のブレーキとなる懸念がありました。2つ目の働き方の面では、ワーク・ライフ・バランスや人材確保の観点から、コロナ後も継続しているハイブリッドワークにおいて従来の境界型防御では限界がありました」
セキュリティに関する2つの課題を解決するために、2024年にTIISはいつでもどこでも安全・安心に仕事ができる「ゼロトラスト型クラウドネイティブ環境」構築プロジェクトをスタート。成功のポイントについて野萱氏は「シングルベンダーで『SSE + SD-WAN』の完全なSASEを目指したことです」と話します。
複数製品を検討した結果、クラウドサービスの利用状況を可視化するCASB(Cloud Access Security Broker)がもっとも優れていると感じたのが、Netskopeでした。
ゼロトラスト型クラウドネイティブ環境に向け、TIISが最初に選定したのはSSE製品でした。「複数製品を検討した結果、クラウドサービスの利用状況を可視化するCASB(Cloud Access Security Broker)がもっとも優れていると感じたのが、Netskopeでした。可視化機能に加え、きめ細かな制御が可能である点にも優位性がありました」と野萱氏は、選定の理由を説明します。
「情報漏えいの観点では、クラウドサービスへのファイルアップロードをブロックできることが重要です。しかし、そのために利用そのものを禁止するとダウンロードも行えなくなります。『アクセスの許可・非許可』の二択以外のアプローチが必要でした。NetskopeのCASBはダウンロードとアップロードを個別に制御・ブロックできるため、現場のニーズに柔軟に対応できると思いました。また、個人テナントと企業テナントを識別し制御できることも対策強化につながります」
2024年4月に、CASB、SWG(Secure Web Gateway)、ZTNA(Zero Trust Network Access)などセキュリティ機能が統合されているNetskope SSEの採用を決定。導入プロセスで重視したポイントについてITインフラ部 ITインフラ2課 1グループ 成瀬清隆氏は話します。
「すべてのアクセスや通信を信頼しないというゼロトラストの考え方に基づき、最初から細かく制御しすぎると、運用が複雑化し現場で定着しないと考えました。全体、各部署、個人など大きな枠でグループを決め、それぞれに必要な通信制御を設定しました。またSSEで通信の中身を復号して検査するSSL復号化は、アプリの通信遮断を招く恐れがあります。それを防ぐために、SSL復号除外を最小限にして、運用を工夫することでセキュリティの確保を心掛けました」
NetskopeのSSEに加え、Netskope SD-WANを導入することで、エージェントを導入できない端末もSSEと同じセキュリティポリシーを適用できます。
既存のセキュリティ環境からNetskope SSEへの移行を進める中で、SSEだけではカバーしきれない領域への対応が新たな課題になったと、野萱氏は振り返ります。
「当社の各拠点には、打刻機(タイムレコーダー)やプリンター、IoT機器、お客様の保守に対応するPCなどエージェントをインストールできないデバイスがあります。それらに対し、既存のセキュリティ環境を活かして対応した場合、運用が複雑になりセキュリティポリシーの徹底も容易ではありません」
TIISが着目したのが拠点間通信網(WAN)をソフトウェアで制御するSD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)でした。「重要なポイントは、シングルベンダーでセキュリティとネットワークを統合し完全なSASEを実現することです」と野萱氏は語り、続けます。
「NetskopeのSSEに加え、Netskope SD-WANを導入することで、エージェントを導入できない端末もSSEと同じセキュリティポリシーを適用できます。また他社製品の組み合わせでは、ポリシーを複数作るなど煩雑な作業が生じます。シングルベンダーによる運用の統合・シンプル化により、ルーターなどの組み合わせを考える必要もなく、設定だけで容易にSASEを実現できる点など、運用面でも大きなメリットがあります」
NetskopeのSSEとSD-WANを導入し、ゼロトラスト型クラウドネイティブ環境の基盤を構築できました。
2025年8月、TIISにおいてNetskope SSEによるゼロトラスト環境が本稼働。導入効果について成瀬氏は話します。「Netskopeでは、独自のアルゴリズムによりアップロードのアクティビティが識別されないクラウドストレージもブロックできます。他社製品と比較しアップロード制御の徹底が図れたと感じています。またダウンロードを許可することで、ユーザーは必要な情報を必要なタイミングでダウンロードし利用できるようになり、ダウンロードに関する申請も大幅に減りました。さらに当社では、会社が認めた標準の生成AIしか利用できないという制限を設けており、他サービスの使用は申請制とし、承認されたもののみ許可しています」
現在、TIISでは完全なSASE実現に向けてNetskope SD-WANの導入を進めています。SSEだけでは難しい領域への対応に加え、通信費の最適化にも効果があると成瀬氏は言及します。「当社が利用していた従来システムの拠点間通信では、利用帯域に応じて課金がされるため、通信費が右肩上がりの中で歯止めをかけるのが難しい状況でした。Netskopeエージェント搭載PCからの通信をインターネット経由とし、SSEで救えない通信、例えばサーバー発の通信などをSD-WAN経由とすることで、通信費の最適化が図れました。また、各拠点からの通信はSASEゲートウェイを経由することでNetskopeの基盤上で同一のセキュリティポリシーを適用しています。さらに拠点においてWindowsアップデート時などのパフォーマンス低下も解消されました」
野萱氏は「NetskopeのSSEとSD-WANを導入し、ゼロトラスト型クラウドネイティブ環境の基盤を構築できました。今回、自社で培った知見やノウハウを活かし、豊田自動織機グループのDX推進、働き方改革に貢献していきます」と話します。
今後、同社ではAI駆動型開発やAIエージェントによる業務変革の推進を加速させていくと、両氏は語ります。AIエージェント間の通信の可視化、プロンプトのリアルタイム解析など、AIエコシステム全体を可視化・制御・保護するNetskope One AI Securityにも期待を寄せています。