『あらゆるLIFEを、FULLに。』をコーポレートメッセージに掲げ、日本最大級の不動産・住 宅情報サービス「LIFULL HOME’S」を運営している株式会社LIFULL。顧客の人生 (ライフ) だけでなく社員の働きやすさにも配慮し、いち早くテレワークへの移行を進めてきた同社では、Netskopeの導入によるゼロトラストネットワークと、スムーズなシステム運用を実現している。
株式会社LIFULLでは、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S(ライフル ホームズ)」をはじめとするさまざまな情報サービスを提供しています。同社は顧客である人と社会に貢献することと同時に、社員の働きやすさにも配慮し、2019年ごろからVPNを導入することでテレワークへの移行を進めてきました。とはいえテクノロジー本部コーポレートエンジニアリングユニット インフラアプリグループの山村浩章氏によると、当初は稼働初期ということもあり「全社員の同時利用までは想定していなかった」といいます。
ところが2020年のコロナ禍をきっかけに、LIFULLでも全社員が在宅勤務を余儀なくされました。インフラアプリグループでは従来のVPN機能を拡充する形で全社員のテレワーク化に対応してきましたが、その結果、同社のシステムは複数のソリューションを組み合わせて切り貼りしたような状態となってしまい、さらにVPNがボトルネックとなることでシステムの処理速度が落ちるなど、社員の働きやすさとは逆行する「運用上の課題」を抱えることとなりました。
加えて問題視されたのが「セキュリティ上の課題」です。全社でテレワークがメインとなったことにより、社員はこれまで社内ネットワークで行っていた業務を自宅ネットワーク環境で行うことになりました。これにより従来の境界型のセキュリティでは太刀打ちできなくなり、「ゼロトラストネットワークを実現したかった」と山村氏は語ります。
ユーザーの通信がブラウザ経由のものだけでないため、ブラウザプロキシの仕組みを利用するものではなく、クライアントエージェントとして動いてくれる製品だったことです
2つの課題を解決するため、インフラアプリグループでは従来のVPNの代わりとなるソリューションの検討を行いました。山村氏が特に重視したポイントは「ゼロトラストネットワーク」と「CASB」だったといいます。「弊社の『フルリモートの環境、クラウド利用によるインターネットトラフィックが多い』という事情とセキュリティの向上のため、ゼロトラストネットワークの実現という観点から3,4製品を選んで比較検討しました」。
検討の結果選ばれたのはNetskope。決め手となったのは、「ユーザーの通信がブラウザ経由のものだけでないため、ブラウザプロキシの仕組みを利用するものではなく、クライアントエージェントとして動いてくれる製品だったこと」です。
加えてNetskopeのNPA(Netskope Private Access)の機能として、 ZTNA用の仮想アプライアンスを社内側に設置できることも魅力的だった、と山村氏は振り返ります。「弊社はクラウド利用が多いものの、アクティブディレクトリやWSUSなど、社内ネットワークを前提としたインフラ環境も存在します。NPAはそれらと常時疎通をとることができました」。
なお山村氏が各社製品の情報収集を開始したのは2020年の4月ごろ。Netskopeに絞り込んだのは2021年初頭で、約1か月強のPoCを経て4月に契約、社員への配布は5月~6月ごろとなりました。クライアント数は約1,500台に上りましたが、「全端末に入っている証明書を認識し、遠隔でNetskopeをインストールする」インストーラーを利用することで、導入はスムーズに進んだといいます。
弊社はクラウド利用が多いものの、 アクティブディレクトリやWSUSなど、社内ネットワークを前提としたイ ンフラ環境も存在します。NPAはそれらと常時疎通をとることができました 。
導入後の効果について、山村氏がまず指摘したのは「WindowsPCのFeature UpdateやWindows Updateの実施の効率が格段に良くなった」点です。「全社でテレワークが始まった当初、Windows Updateを行っている端末は全台数の6割程度でした。しかしNPAによって社内ネットワーク内のサーバーと常時通信できるようになった結果、現在では9割近くの端末に常時最新のWindows Updateが当たっている状況となり、Feature Updateにおいても、最新ビルドを適用できる環境を構築できました」。
加えて「コスト」の面でも大きな効果が見られています。VPNを利用していたころは認証トークンの更新やハードウェアの保守などで年間数千万円の費用が発生していましたが、Netskope導入によりトータルで1,000万円以上のコストカットを実現しました。「これはあくまで目に見える金額だけの話です。これに加えてトークンの再発行や保守の更新など、もろもろの手間がなくなることで部内の運用負荷も大きく軽減されました」(山村氏)。
一方、定性的な効果について山村氏は「社員からの評価」を挙げます。「VPNを使ったテレワークでは社員同士が帯域を取り合う形になり、特に勤務開始時や終了時にはアクセスが集中することでシステムの動作が遅くなっていました。Netskopeに変えてからは、そのような時間帯でもサクサクと動くようになり、通信が良くなった、スムーズにアクセスできるようになった、といった声をいただいています」。
VPNを使ったテレワークでは社員同士が帯域を取り合う形になり、 特に勤務開始時や終了時にはアクセスが集中することでシステムの動作が遅くなっていました。Netskopeに変えてからは、そのような時間 帯でもサクサクと動くようになり、通信が良くなった、スムーズにアクセスできるようになった、といった声をいただいています。
Netskope、とりわけNPAの導入により、LIFULLではすべての社員が、勤務場所にかかわらず社内のインフラ環境にシームレスにアクセスできるようになりました。これにより「社内ネットワークと社外ネットワークという概念はなくなる」と山村氏は考えています。
同社ではこれまで拠点ごとに閉域網を構築してきましたが、今後はこれを廃止し「よりシンプルなネットワーク環境」の実現を目指すとのこと。そうすることでネットワークの高速化や、閉域網の維持にかかっているコストの削減を目指していきます。
「閉域網の廃止は、実は以前から検討していました。ただこれまでは検討する項目が多く、具体的な検討に踏み込めない状態でした。Netskopeの導入によって、実現が現実味を帯びてきました」(山村氏)。
加えて同社では内部統制にかかわる会社全体のセキュリティも検討しており、山村氏のインフラアプリグループだけでなく、他の部署とも共同で進めているといいます。「Netskopeの導入はVPNの代替と言うかたちで、一斉に全社に浸透させました。ですが、本来の目的はゼロトラストネットワーク、セキュリティの向上にあります。標準レベルのライセンスでも実現できていますが、オプションのライセンスも利用しながら、より安全なネットワーク/セキュリティを実現し、従業員に提供していきます。」と、山村氏は語りました。